このシリーズでは、長年代替医療に携わる医師に現在の医療の現状、健康食品との関わりについて聞いている。今回は、前々回に引き続き、帯津三敬病院(埼玉県川越市)名誉院長の帯津良一氏。「人間を丸ごとみる」ホリスティック医学を提唱し、患者と二人三脚で数多くの治療法を実践している同氏に、健康食品をどのように考えているか聞いた。
80年代後半に私が「人間を丸ごとみる」ホリスティック医療を行うようになってから、医療現場全体も変わってきたと思う。90年代に入ると、代替療法が台頭してき、統合医療に向かう流れができあがってきた。それは、「西洋医学が患者の期待に答えていない」からだ。多くの患者を苦しめる、がんやエイズ、膠原病など現在もある難病の数々は体だけの病気ではないが、西洋医学は命や心の領域までなかなか踏み込むことはない。
“心や命をみる医学”に対して、患者は期待するようになった。代替療法は「エビデンスがない」と西洋医学では批判されるが、体のエビデンスがないだけ。西洋医学も、命や心の領域ではエビデンスはない。
代替療法のエビデンスがない部分は直観と想像力で補い、今後エビデンスを構築すればいいと考える。生きた人間は、科学では分かりきれない部分があり、エビデンスに頼りすぎるのは臨床の場では現実的ではないのだ。
では、どんな代替療法がベストかといえば、気功をはじめ一つの方法に固執することはないと思う。当院では、多くの場合、患者の側から、「この代替療法を試してもいいか?」と持ち込まれる。そうした問いに対して、値段が高くなく、危険でなければ、実践してもらって構わないと答えている。
患者主体で代替療法を選択しているために、私自身の代替療法のレパートリーは広く深くなることができた。
健康食品も、そうした代替療法の一つである。
以前は患者が藁にすがるような気持ちで、手当たり次第、ありとあらゆる健康食品に頼るケースもあった。しかし、今は患者自身で健康食品の情報の整理をするのが上手になった。
そのため、高くなく安全な健康食品は使用によって、患者自身が安心できれば、利用してもらっている。ただし、健康食品企業は、医療機関に健康食品を提供する場合は、その製品の正しい情報を開示するようにしてもらいたい。臨床の場では、プラシーボ効果がよく利用される。医師が治療薬を信頼し、それを患者が納得できれば、効果以上の効果を発揮することができる。健康食品も同様で、医師がその健康食品を信用していれば、それが患者にとって利益をもたらすだろう。
そしてもう一つ、代替療法で利用される健康食品は、1ヵ月1 万円以内のものが望ましい。多くの場合、患者は数種類利用している。1ヵ月に何十万円も健康食品代がかかっては、経済負担がストレスとなり、免疫を落とすことにもなりかねない。患者、消費者を第一に考えた良心的な製品作りを心がけていただきたい。
*丹羽靭負(耕三)氏の病院等に関する問い合わせは日本SOD研究会(03-5787-3498)まで。