薬の再評価制度の見直しは不可欠
「毒にも薬にもならない」薬が相当数ある(厚生省幹部)。厚生省中央薬事審議会:朝日新聞(98-05-16)から引用
※編者コメント
新薬承認後、6年経過後に薬の再評価を行うことになっています。そこで、問題が発見されれば、承認の取り消しや指導が行われることになっています。
この記事は、その6年間に発生する課題について述べています。ここでは、脳循環・代謝改善剤の見直しについて述べていますが、その他の薬剤についても同様なことが言えそうです。
脳循環・代謝改善剤の再評価問題は、これまでの厚生省の新薬審査のずさんさを改めて見せつけるとともに、再評価制度の課題も浮かび上がらせた。
- 新薬の審査は、承認前の審査と6年後の再審査がある
- 医薬品は承認後、通常6年後に再審査を受ける。承認前の臨床試験だけでは被験者数に限りがあり、市販後に安全性データなどの収集を製薬会社に義務づけ、再審査するものだ。
医学・薬学水準の進歩を前提に安全性、有効性を見直すための再評価は、再審査を経た薬について、厚生大臣が指定し、メーカーに資料の提出を求めて行う。
サリドマイド事件中、ビタミン剤の有効性が問われたことなどが制度化のきっかけとなった。
- 再評価制度に時間がかかり過ぎ、企業は儲けて通り抜け
- 再評価制度の問題点の一つは、作業に時間がかかり過ぎることだ。
1988年に改められた現行の再評価制度の下では、これまでに約3.000品目が指定され、16品目(5成分)が「有用性が低い」として承認を取り消された。
中には結論が出るまでに5~6年かかった例があり、処分が出た時点ですでに販売が中止され、企業にとってほとんど実害のない薬も複数あった。
脳循環・代謝改善剤については、厚生省は臨床試験データの収集期間を2年間と設定。
データ提出から約1ヶ月という短期間で承認取り消しを決めた。製薬企業にとってこれまでにない「痛み」を伴う再評価となった。
- 日本製の効果の不明な薬が認められ、外国製の有効な薬が未承認という現実
- 日本で健康保険が適用される医薬品は約13.000品目。この中には、厚生省の幹部が「毒にも薬にもならない」と公言するものも相当数含まれている。
その一方、海外では特定の病気への標準薬として高い評価を得ていながら、日本では別の病気の薬としてしか承認されていないために、臨床現場で適応外使用されるものも数多いという矛盾もある。
新薬の臨床試験については昨年新しい基準が施行され、厳格な審査制度に向けたスタートが切られたが、再評価制度の見直しはこれからだ。