世界最大の面積を持つ南米ブラジルのアマゾン川流域に広がる熱帯雨林は、炭酸ガスを吸い、生物に必要な酸素を作り出す自然の大工場といえます。そして、地球温暖化を防ぐ為にも大きな役割を果たしています。
この広大な森林地帯は、膨大な種類の動植物が生息する多様な遺伝子資源の宝庫でもあり、確認されている薬用植物だけでも5000種以上にも及ぶといわれています。タベブイア・アベラネダエ(以下TA)の原料となる「ノウゼンカズラ科タベブイア属アベラネダエ種」という巨木は、このアマゾンの複雑な生態系の中で生まれました。
アマゾンの源流域、ペルー、ボリビアあたりに高度な文明を築いた古代インカ帝国の子孫といわれるインディオたちは、この樹木を「神の恵みの木」として崇めてきました。この樹木は、虫やカビ、コケなどを寄せ付けないことから、古代からその殺菌作用が注目され、そしてこの樹の内側の樹皮を剥いで煎じ、万能に効く薬として使ってきました。その効果は鎮静作用をはじめ殺菌、抗炎症作用、代謝促進など広範囲にわたり、インカ帝国の歴史に疫病流行の記録がないのもそのお陰だと言われています。
古代より神秘の樹木と受け継がれ、現代においても民間薬として伝えられているTAは多くの人に飲用されてきました。こうした中で、TAに医学的な効果があることが経験的に知られるようになりました。現在は世界中の研究者や学者たちに注目されているTAですが、西洋医学が万能という考えが主流の当時の医学界では、生薬や漢方薬、伝承療法などは見向きもされずTAは科学的に解明されることはありませんでした。
ところが余命わずかと宣告された末期がん患者やリウマチ、アレルギー、アトピーなどが改善されたなどの体験談が人から人へ口コミで広がるにつれ、それに注目した一部の専門家や研究者たちが研究を始め、さまざまな医学的効果が明らかになりつつあります。
その樹皮に最初に注目したのが、植物学者でサンパウロ大学農学部名誉教授、ウォルター・ラダメス・アコーシ博士でした。植物療法学の世界的権威でもある博士は1960年の前半からその薬効に注目し研究を始めたと言われています。博士は40年以上に渡りこの樹皮の研究を続け、この樹皮の成分にがんをはじめ糖尿病・肝臓、腎臓の慢性疾患などにも効果があることがわかってきました。特にがんに対しての効果に確信をもった博士は、抗がん作用がどの成分にあるかを解明しようとしましたが、研究はそこでいきづまり解明はできませんでした。
そこで、アコーシ博士の研究成果をもとに、世界各国で研究が始まりました。中でも日本人研究者である京都大学薬学部、故・上田伸一博士と京都府立医科大学生化学教室の徳田春邦博士が有効成分の解明に着手し、樹皮に含有される色素のフラノナフトキノンという成分に抗がん作用がある物質を見つけます。
このフラノナフトキノンは研究を続けるうち解てきた事は、正常な細胞を傷つけることなく、体内の細胞ががん化することを阻止し、生体内で発生するあらゆるがん細胞の増殖を阻害する働きがあることが明らかになりました。
この研究成果はその後世界各国の学会で発表され、高い評価を受けました。日本がん学会で最初に紹介されたのは1989年名古屋で開催された第48 回日本がん学会総会でその後も研究が進むにつれ数回発表されました。このように地道な実験を重ね蓄積されたデータを権威ある学会で数回にわたり発表されたことはTAの効果が科学的に証明されたという事ではないでしょうか。
正常な細胞に発がん物質を加えがんを人工的に引き起こし、ここにTAの抽出液を加えて培養しその結果を見ると、TAの成分を加えないときと比較して、正常細胞のがん化が抑えられているという結果が出ました。正常細胞ががん化するときには、イニシエーションとプロモーションというプロセスを経る必要がありますが、TAの作用はこの2つのプロセスそれぞれに制がん作用があることも解りました。TAががんを抑える効果に加え、がん細胞を直接攻撃するという興味深い研究結果があります。その研究結果を導き出したのが、宮城県立がんセンター研究所の免疫学部長、海老名卓三郎博士です。
博士は実験用のマウスに人工的に悪性腫瘍を発生させ、さらにそれを転移させて病巣を作り、原発巣と転移巣を作りました。そして、TA茶を5分間煮出したものと30分間煮出したものの2種類を用意することで、そこに含まれる有効成分の濃度を変えました。
この2種類の抽出物をマウスのがん細胞のみに与え、24時間の変化を調べたところ、TA抽出液を与えなかった場合に比べ、明らかな浸潤(がん細胞が周囲の正常細胞を破壊しながら、それらを取り込むように広がっていく)阻害作用が見られ、TAが原発巣・転移巣の両方でがん細胞を直接攻撃することがわかりました。
次に海老名博士は、がん細胞に対するアポトーシス誘導能(アポトーシスを誘導する物質が細胞に作用すると細胞は強制的に自滅する)を検証しました。上記の実験同様2種類のTA茶を用意し、マウスのがん細胞に24時間投与した結果、がん細胞にアポトーシスが起きることが確認されましたがアポトーシスが起こっていたのはがん細胞だけで、正常細胞である末梢血リンパ球に対しては、アポトーシスを誘導しませんでした。
この実験ではTAは正常細胞とがん細胞を区別し、がん細胞だけをアポトーシスに誘導し自滅させていたことがわかりました。さらに、海老名博士は、興味深い実験を行いました。それは、がん細胞が増殖を始めると、がん細胞はエネルギーを補給する為に補給路として新たに血管を作ります。
その血管を作ることが抑えられれば、がん細胞の栄養源を断ち、兵糧攻めができることになります。実験結果は博士が用意した2種類の血管内皮細胞に対して、その増殖を抑える作用があることもわかりました。