活性酸素による動脈硬化の進行過程
丹羽靭負(耕三)・土佐清水病院長著「激増 活性酸素が死を招く」(日本テレビ出版)から引用
- 丈夫な血管も、活性酸素とコレステロールから作られる過酸化脂質には勝てない
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動脈は、内側から、内膜・中膜・外膜の3層から構成され、極めて丈夫な構造になっています。
しかし、この丈夫な血管も、活性酸素とLDLコレステロールが結合してできる過酸化脂質を中心とする脂質により、障害を受けます。
- 血管の障害①内膜に沈着して、内腔を狭小化し、血流を悪くします(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞など)
- 血管の障害②中膜の中に浸透して、中膜を脆くし、僅かな血圧の上昇でも血管が破れやすくなります(脳出血など)
- 動脈硬化の進行過程
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動脈硬化は、若いときから徐々に発生し、20~30年以上かけて悪化し、40才後半~5O才位になると、血管系を中心とした疾患を引き起こします。
- 第0段階:動脈硬化がなく、良好な状態
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活性酸素の弊害がない状態で、コレステロールだけでは血管壁に付着しないため、血管の狭小化は起きず、血液はスムーズに流れます。
- 第1段階:過酸化脂質が血管を狭小化、活性酸素が動脈硬化の原因物質を作る!
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活性酸素とLDLコレステロール(血清中にあり、脂肪を運搬する低比重リポタンパク)が反応し過酸化脂質ができます。
過酸化脂質が血管壁に付着すると、この過酸化脂質が接着剤の役目をして、その上にコレステロールや中性脂肪、さらに過酸化脂質が積み重なり、血管の内腔が狭くなります。
動脈硬化が進行すれば、狭心症や脳出血の可能性が出てきます。
- 第2段階:動脈硬化が進行して、血管を閉塞する
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血管内膜への過酸化脂質やその他の脂質が沈着(沈着した脂質は、お粥のようにドロドロしているので、粥腫=アテローム変性といいます)する結果、血管壁からせり出して、『瘤=血栓』のようになり、血栓部より遠位には血液が届かなくなり、その組織は壊死します。
これが心筋梗塞や脳血栓の成因です。壊死した心臓の筋肉や脳細胞は、再生することができません。
- 参考:全身の動脈硬化が、脳の疾患を招く
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血栓(動脈硬化部の破片)が、脳の動脈を詰まらせる!
動脈硬化は、脳や心臓だけでなく、全身に発生するものです。ときに、他の部位にできた動脈硬化による『瘤=粥腫』がはがれて、血流に乗って脳に到着し、脳の動脈を詰まらせて(血栓)、障害を招くことがあります。
それが、一過性脳虚血発作(頸動脈などの血栓がはがれて、脳を詰まらせる)や脳塞栓(心臓などの血栓がはがれて、脳を詰まらせる)です。
一過性脳虚血発作や脳塞栓が認められれば、いつ脳卒中(脳出血や脳血栓)が起きてもおかしくない状態であるといわれています。