動脈硬化が引き起こす心疾患(2)
狭心症や心筋梗塞に活性酸素が関連している
※編者コメント:以下の記事の概略は次のようです。活性酸素が心臓の血管に動脈硬化を発生させ、狭心症や心筋梗塞の原因となり、また心筋梗塞の発作時に大量に発生した活性酸素が更に心臓にダメージを与える。これらの心臓に障害を与える活性酸素除去物質が発見された。
狭心症発作の原因「活性酸素」、除去物質を発見
アサヒビール中研&東京理科大・日本経済新聞(92-08-01)から引用
アサヒビールの中央研究所と東京理科大生命科学研究所は共同で、狭心症や脳梗塞後遺症などの疾病の原因となる活性酸素を消す作用が、ネオプテリンと呼ばれる物質にあること発見した。
- 活性酸素を除去する酵素ネオプテリンを発見
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ネオプテリンは体内で悪性腫瘍や細菌、ウィルス感染の際に血中や尿中に分泌されるが、生体内での役割は分かっていなかった。
ネオプテリンは微量で活性酸素の除去に効果を表すほか、生体内物質であるため副作用もないと見られており、同物質を用いた治療薬開発が進めば、活性酸素関連の疾患に広く対処できるようになりそうだ。
ネオプテリンは、体内のマクロファージ(大食細胞)と呼ばれる免疫細胞で生成し、がんやエイズなどの感染症を発生すると尿や血清中に出てくる。
がんや感染症にかかったかどうか診断する際の指標となっているが、体内での役割は分かっていなかった。
- 活性酸素は、過剰に生成されると障害を引き起こす
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活性酸素はマクロファージや白血球で生成する反応性の高い酸素分子で、殺菌作用や制がん作用を示す反面、過剰に生成されると様々な細胞障害を起こす。
例えば、心筋梗塞は冠状動脈が詰まるが症状だが、血液が再開する時に活性酸素が過剰に生成され、心筋を壊死させるなど後遺症を引き起こす。
このほか、活性酸素は脳梗塞後遺症・ストレス性潰瘍などの虚血障害、慢性リューマチ、肝炎・腎炎などの炎症性疾患、農薬中毒、放射線障害など深い関わりがあると言われる。
ネオプテリンが活性酸素を低減する作用があることが分かったことで、こうした疾病への治療薬開発への道が開けると同研究所では見ている。
現在、活性酸素関連向けの治療薬としては、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)という抗酸化酵素が一般的だが、高分子物質で安定性に欠けるなどの間題があった。
※編者コメント:丹羽靭負(耕三)博士が開発したSOD様作用食品は、食品として開発されたもので極めて安定しています。
活性酸素を無毒化する酵素が心臓(心筋梗塞)のダメージを防ぐ
大阪大学医学部・日本経済新聞(90-10-20)から引用
炎症の原因になる活性酸素を無毒化する酵素が、心筋梗塞などで受ける心臓のダメージを防いでいる / 大阪大医学部の谷口直之教授らのグループがこんな研究をまとめた。
- 心筋梗塞の発作後に大量に発生する活性酸素が問題
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の酵素マンがん・スーパーオキサイドデイスムターゼ(Mn-SOD)が体内に存在し、老化の進行や発がんなどと密接なつながりがあることは、以前から知られていたが、心臓との関係について、はっきりしたデータが出たのは今回が初めて。
心筋梗塞の新しい治療法の開発などに役立ちそうだ。
心筋梗塞の発作が起きると、心臓への血流がいったん途絶える。発作がおさままって血流が再開すると、心筋細胞にダメージを与える活性酸素が大量に発生する。
- 心筋梗塞後、酵素SODの値が急上昇
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谷口教授らは、この活性酸素を壊す酵素の一つであるMn-SODについて、免疫反応の仕組みを利用した新しい検出法を開発した。
この方法を使って、急性心筋梗塞の患者30人を調べ、心筋梗塞にこの酵素がどう関係しているかを探った。
その結果、いずれの患者も心臓の血流再開後、約100時間で血液中の同酵素(Mn-SOD)が急激に上昇することがわかった。
- 酵素SOD値の上昇は、活性酸素に対抗するため
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谷口教授らはこれとは別に、動物実験で、生理活性物質のTNF(腫瘍壊死因子)やインターロイキン1を与えると心筋中から同酵素が大量に生産されることを突き止めている。
まだ確認されていないが、人間でも心筋梗塞の発作時に急増する活性酸素に対抗するため、体内で微量のTNFなどが作られ、これが引き金となって心筋中で多量の酵素が生産されるとみられる。
活性酸素の発生を抑える新しい治療法の可能性もこのため、この仕組みをうまく利用できれば、心筋梗塞発作時の症状を低く抑えるなど、新しい治療につながる可能性もある。